卒論紹介3
2018年度卒業論文
X ジェンダーの被服体験-性別の枠を越えたファッションサービスのUX デザイン-
【方法】X ジェンダー当事者の被服に関する価値や課題を明らかにするため、X ジェンダー当事者7 名にインタビューを行った。その分析結果をもとに、UX デザインのプロセスに従って、4 体のペルソナと主要ペルソナのシナリオを作成したのち、提案するファッションサービスのプロトタイプを作成した。X ジェンダー当事者を対象に2 つの評価を行い、プロトタイプを改善したのち、X ジェンダー当事者と大学生(セクシュアリティを問わない)を対象とした評価を行い、プロトタイプの有効性を定量的に検証した。
【考察】被服におけるジェンダー規範や、メンズ/レディースの枠を取り払うことは困難である。しかし、X ジェンダー当事者が抱えている被服購入時の課題の多くは、本研究で提案する、UX デザインのプロセスに従って作成したファッションサービスによって解決できる可能性が高い。また、X ジェンダー当事者をリードユーザーとした本サービスは、一般ユーザーの潜在的ニーズも満たせる可能性がある。
2019年度
集団性から見る社会参加ージェンダー平等に対する日韓比較ー
【方法】日本の若者には2019年7月11日に東京女子大学で行われた講義の終了後に質問紙調査を行い、韓国の若者には雪だるま式抽出法で得た協力者に対してGoogleフォームを利用して質問紙調査を行った。また2019年10月25日、留学生として東京女子大学に通うAさん(仮名)に対してインタビュー調査を行った。質問紙にはジェンダー平等、政治関心・社会参加、集団主義尺度、文化的自己観に関する項目群が含まれていた。インタビュー調査では、Aさんのデモ参加の経緯・内容、政治関心、日韓における若者の違いを中心に話をしてもらった。
【考察】これまで東アジアとして一括りにされることの多かった日本と韓国が、文化的自己観の違いに応じて社会との関わり方に違いがあることを提示した。より具体的には、日本で特徴的であった相互協調的な人々から成る集団性に加え、韓国で特徴的であった相互に独立した個人から成る集団生も成立し得ることを、定量的かつ定性的に示した。これらの知見を踏まえ、日韓関係の改善及び発展には互いの心理行動傾向の相違を前提として理解した上で、個々人の意見を主体的に表明することが重要であると結論付けた。
2020年度
女子大学生の外見意識
【方法】2020年7月16日〜8月5日に女子大学生の1年生から大学院2年生の学生213名を対象に質問紙調査を実施した。内容は、「デート(恋愛対象の人と2人で会う)時」、「同性の友人と会う時」、「異性の友人と会う時」、「アルバイトに行く時」の4つの場面を設定し、化粧とファッションを変えているか、変えている場合は化粧に関してはどのように変えているかについて質問した。また、4つのうち最も気を遣う場面を回答してもらい、公的自己意識と私的自己意識との関連を検討した。
【考察】他人からの見た目を気にする人は他人受けする化粧やファッションをしたいと感じていても、特に会う人によって外見の整え方を変えたり化粧をより丁寧にしたりといったことはしない人が多い。自分の理想へのこだわりが強い人は、自分がより魅力的に見える魅せ方を理解しているため、自分の化粧に自信を持っている。
2021年度
マスクの色による着用者の印象の違い
【方法】女子大学生を対象とし、質問紙を用いて色のついたマスクの着用者の印象を11対の形容詞対でSD評価してもらった。その準備としてまず、現在販売されているマスクの市場調査を行い実験に使用する31色を選定した。次に、想定される3場面における31色の印象と回答者自身の被服関心(性質)を問う質問紙調査を13名に行い、どのような場面でどのような色の結果を得ることができるかを調査した。これらの結果を用いて31色から8色に絞り込み、3場面のなかで最も適したレジャーランド場面における、8色のマスクの印象と回答者の性質を問う本実験を90名に行った。またそれらに加え、回答者の性質を問う質問紙の結果を用いて、性質が結果にどのような影響を及ぼすのかも並行して調査した。
【考察】回答者の被服関心(性質)に関しては、W、lt青、Bkの信頼性にだけ有意な差が見られたが、これは、新型コロナウイルス流行後マスクが感染予防の意識の目印となり、無意識にマスクに対し信頼性を重視していることが理由かもしれない。今回は女子大学生のレジャーランド旅行場面という限られた条件下での実験であったため、今後は年代の幅を広げ、あらゆる場面を想定した実験をすることで表出したい印象の形成をより正確にできるようになるかもしれない。また、今後マスク着用の必須が続けば、マスクを被服の一部として活用するため、現在販売されていないマスクの色が増えてくるかもしれない。そのようなマスクの色が増加すれば、単にマスクの色の選択肢の幅が増えるだけでなく、表出したい印象の幅を広げることに繋がり今後のコミュニケーションの大きな手助けとなるだろう。
2022年度
Webサイトのレイアウトデザインがユーザーに与える影響
【方法】上記の目的の検証のため、Google form にて質問紙実験を行った。具体的に(1)の検証のため就職活動等に関する6つの質問項目から、現在の就職活動への態度を回答してもらった。また、(2)の検証のため、レイアウトデザインが異なる5つの新卒採用サイトのトップページを独自に作り、その刺激を呈示し、印象や志望度の10項目について5段階で回答してもらった。
【考察】今回の調査から、新卒採用サイトは重要視されており、志望度の高さの変化にも影響を与えていたことから、企業が大学生に就職先として選択してもらうための大きな要素であると考える。また、グリッド型レイアウトとシングルカラムレイアウトの印象評価の値が高かったことから、グリッド型レイアウトとシングルカラムレイアウトが新卒採用サイトのトップページのレイアウトには適しており、「親しみやすさ」「志望度」の項目においては一番グリッド型のレイアウトが影響を与えるということが明らかになったことから、グリッド型レイアウトを用いてサイトを作成するとより親しみを持ってもらいやすくなり、志望度も高めることができると考える。
2023年度
女子大生と生理の貧困
【方法】研究1では大学関係各所への聞き取り調査、研究2では、生理用品設置に向け、本学の学生の実態を調査するためのアンケート、研究3では、本学のトイレ内に生理用品を無料設置する社会実験を3週間実施した。社会実験の前後で本学の学生にアンケート調査を実施し、生理や生理の貧困に対する考えや態度の変化を測った。研究4では生理の貧困の要因を探るため、研究3の調査結果の再分析を行った。
【考察】生理の貧困は、生理に関する教育の不十分さや男女差、女性の社会参画機会減少による地位低下などの問題と密接に関連していると考えられた。生理によって生じる不平等は、女性の地位向上と密接に結びついているため、教育機関である大学にとって解決すべき重要な課題であると言える。学生が負担なく生理用品にアクセスできる環境を整えることが、女性の地位向上、生理の貧困の解消の第一歩となるのではないだろうか。
2024年度
パリ・オリンピックのメディア観戦に関する研究
【方法】2024年8月18日に、18歳~69歳の男女それぞれ520名、計1,040名を対象に、パリ・オリンピックのメディア観戦に関する質問を中心としたWeb調査を行った。
【考察】「楽しむ」という観戦動機は、競技のドラマ性や素晴らしさに魅力を感じ選手を応援するなど、スポーツの特性や本質を享受する動機である。よって、他の動機に比べて強く抱かれると考えられる。また、どの利用媒体においても「映像の見やすさ」を求める動機は満たされたといえる。よって、各媒体に特化した工夫ではなく画角や放送内容に焦点を当てた工夫を行うことで、現地観戦とは異なるメディア観戦ならではの満足を高められると考える。さらに、社会的アイデンティティの中でもファンコミュニティIDは、SNSコンテンツを併用して観戦していたことによって強く感じられた可能性があり、スポーツ観戦における社会的アイデンティティの重要性を改めて示すことができた。