卒論紹介4

2018年度
CMに描かれる家族像の変遷1975年から2017年までのCMを中心に
【方法】本研究では、上記の目的のために、1975年~2000年の分析にアドミュージアム東京が所蔵する広告資料のデータベースである「デジバブ」、2001年~2017年の分析にビデオリサーチコムハウス社の「CM Digital Library」の2種類のCMデータベースを用いて、家族が描かれているCMの内容分析を行った。

【考察】「三世代世帯」や「家族全員での食事場面」が増加していることから、CMでは現実の家族のかたちが全て反映されているわけではないと考えられる。性別役割分業意識については、「女性は家事・育児、男性は仕事」といった考えが母親・父親の間ではなくなってきていると考えられる。しかし、娘・息子、祖母・祖父の間では、上記のような考えが依然として残っているといえる。

2019年度
女子大学生が惹かれるパッケージデザイン―パッケージデザインと性格特性がリップの購入に与える影響―
【方法】まず、研究対象の商品を決めるために、2019年6月4日に李ゼミ履修者の大学3年生及び4年生の計22人を対象にパッケージデザインに関する予備調査を行った。次に、10月1日から17日にかけて、リップのパッケージデザインと女子大学生の購買行動に関する本調査を東京女子大学に通う111名の学生に対して行った。

【考察】女子大学生が惹かれるリップのパッケージデザインとは、シンプルなデザインで、高級感があり、自分向きである思うデザインである。また、持ち運びの際にかさばらない形状であることも重要であると考えられる。一方で、性格によるデザインの好みに差はみられなかった。そのため、「自分向き」は性格特性と関係がないと考える。

2020年度
本の表紙が与える印象
【方法】Google formにて質問紙実験を行った。具体的に、(1)の検証のため、読書等に関する10の質問項目から、普段の読書への態度を回答してもらった。また、(2)の検証のため、暖色・寒色・無彩色、人物有り・人物無しの6種類の本の表紙デザインを作り、その刺激を呈示し、印象や購買意欲等の11項目について7段階で回答してもらった。

【考察】読書の実態調査の結果から、現在の大学生は活字離れの傾向があることが伺え、その理由にSNSやゲーム等の普及が影響していることが示唆された。印象評定実験の結果から、温かさや親しみやすさを感じる表紙は読みたい本として捉えていないことが明らかになったが、これは回答者(消費者)によって本に求める内容が異なることも関係しているのではないかと考える。また、人物有りの表紙、有彩色がベースとなる表紙は読書意識や購買意欲に効果的であることから、この要素を表紙として取り入れるとより多くの消費者に興味を持ってもらえると考える。

2021年度
マスクコミュニケーション―新型コロナウイルス感染流行前後のマスクの役割の変化―
【方法】本調査では、上記の目的のために女子大学生を対象に(1)コロナ前後のマスク着用に関する質問や心理尺度を用いた質問について尋ねたものと、(2)マスク着用時の顔面・素顔の魅力度やマスクの色の魅力度について尋ねたものの合計2つのウェブ調査を行った。

【考察】コロナ後もマスクを着用する人は一定数おり、着用の理由はマスク本来の用途である病気・感染症対策だけではなく、着用への慣れや着用で得られる安心感、心理傾向などが挙げられ、コロナ後のマスク着用に繋がることが調査によって明らかとなった。また、マスクは顔の魅力度にも関係することが分かった。新型コロナウイルスの国内における感染拡大が進み、マスクを着用しなくてはならない期間が長く続いたことで、コロナ前はマスクをそれほど着用してなかった人にもマスク着用に対する慣れや安心感が生じ、対策という用途以外の使い方を見出し始めるきっかけになったのではないか。

2022年度
女子大生のジェンダー観とファッション意識の関連―ジェンダーレスファッションへの態度を規定する要因―
【方法】上記の目的を果たすために、東京女子大学の学生を対象に質問紙調査を実施した。学科・専攻は問わず、講義科目の授業終了時間時に受講生に対して質問紙を配布し、15分後を目安に回収した。有効回答件数は91件であり、それらの回答データに対して分析を行った。

【考察】私たちが他者からの評価やジェンダー規範に制約された意識を持つことは、自らの意識や行動を縛るだけでなく、他者に対しても同様に縛られた制約を課してしまうことにつながる。その意味で、私たち1人1人が既存のジェンダー規範から抜け出すことが、他者に対するジェンダーレスファッションへの受容へとつながると言えよう。そして、そのような既存のジェンダー規範からの脱却に、多様な情報を提供するメディア媒体の変容が大きな役割を果たすであろう。

2023年度
アルバイトの人間関係にみられる敬語・タメ口間のスタイルシフト
【方法】調査は筆者のアルバイト先に現在も在籍している従業員と、退職済みの元従業員、計3名を対象として、2023年7月18日(火)~9月20日(水)にかけて行った。筆者と調査対象者の1対1の自然談話を観察するために、同意を得た上で録音し、その文字起こし資料をもとに分析を行った。

【考察】主な機能として、タメ口には心的距離の縮小効果がある一方で、敬語には距離の拡大や丁寧度を保持する効果があるが、加えて、相手の敬語に同調することで距離を縮める効果があるとわかった。年下だけでなく年上がスタイルシフトを行うことで双方が同じ目線で会話できるようになるため、互いに働きかけることが重要である。 ス体」は距離を縮小させる効果がありながらも敬語に近い役割を果たし、親しさと丁寧さを併せ持つ。タメ口使用よりも丁寧な印象を与え、失礼さや堅苦しさが緩和された親しみのある円滑なコミュニケーションが可能であると考えられる。

2024年度
聴覚障害に関する研究難聴者からみる共生社会
【方法】質問紙調査とインタビュー調査を実施した。質問紙調査は、2024年9月21日から10月25日にかけて男女106名を対象に行った。半構造化インタビュー調査は、2024年11月12日から11月21日にかけて行った。

【考察】難聴者にとって十分な共生社会とはどのようなものであろうか。調査の結果、インタビュー調査の対象者は、特別な支援を求めていなかったが、困っていることは沢山あると明らかになった。しかし、ひとつひとつは些細で、配慮のしようがないことも多い。このように、特別な支援を求めていないというのは、「どうしようもないから」という意味にもとれる。しかし、社会が解決できる問題もあると考える。例えば、障害開示の問題(カミングアウトに対する不安感や抵抗感)だ。この問題の主な原因は、相手や社会が難聴についての理解度が低いことである。難聴についての理解が進み、難聴者が不安を感じることなくカミングアウトできる社会が、難聴者からみる、目指すべき共生社会のひとつの形なのかもしれない。また、難聴者、聴覚障害者に対する支援の姿勢は、自治体や大学の制度から受け取れるが、十分でないと感じている。特に、障害者手帳を持たない難聴者への助成を望む。

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