キルバーンと著作権

July 3, 2019 by 小田浩一

Kilburn_dandelion_ss
図1 キルバーンのタンポポ図

図1は、僕が昨年の夏ごろに手に入れた博物画です。縦30cmくらいの大きなタンポポ図で、1枚ずつ手彩色された銅版画です。これは、キルバーン(1745-1818, William Kilburn)という版画家、植物画家の手によるもので、18世紀の終わりごろにロンドンで刊行された「Flora Londonensis」という図鑑に収録されている精密版画です。「Flora Londonensis」はロンドンに生える植物を実物大で描いたもので、植物図鑑のはしりと言えるようなものです。キルバーンの版画は実物大のタンポポの生き生きした描写が素晴らしく、図鑑らしくタンポポのつぼみから綿毛にいたるすべての状態が描かれていますが、白い綿毛を描くのに緑の葉で囲むことで白い色を使わずに白いことを表現するというテクニックが使われています。キルバーンという人の画家として並外れた力量がわかります。

キルバーンはこの仕事をすぐにやめてしまい、自分の会社で花柄をプリントした生地を作って売る商売をはじめます。www.pinterest.jpでウィリアムキルバーンというキーワードで検索してもらうと、彼のデザインした花柄がたくさん見つかります(例えば、Claire Elsworth Design, 2019)。図2は、彼の花柄デザインの1つです。今日の私たちはあちこちで花柄を使っているわけですが、その花柄デザインは18世紀のキルバーンに遡ることができます。

キルバーンの花柄
図2 キルバーンの花柄(Victoria and Albert Museum, London, 2019)

彼の花柄生地はとても人気が出て商売は成功しますが、同業者が、キルバーンが新作を出すたびにすぐにそのコピーを作って安く売り出してしまい、彼がせっかくデザインしても同業者にもうけをもっていかれてしまうという事態に苦しんでいました。そこで、彼は1787年にイギリス議会に服飾関係の著作権を保護してもらえるように働きかけ、法律を作らせました。同業者がコピーを一定期間作れなくする法律です。しかし、商売がたきからの反対も強かったようで、一定期間とはたった2ヶ月でした(Wikipedia, 2019)。

著作権は、英語ではコピーの権利、copyrightと書きますので、まさにコピー、複製をする権利が中心になっていることがわかります。人間は、すぐれたものをコピーすることで文化や生活を豊かにしてきました。サルマネという言葉がありますが、猿の仲間の中(人間は動物分類上猿の仲間です)で、もっとも真似やコピーの得意なのは実は人間だと言われています。

先日、ある学生から、「インターネットでの違法ダウンロードが気になる。音楽を勝手にダウンロードして視聴するのはよくない」という意見を聞きました。まさに著作権、copyrightにかかわる意見で、その通り、でもあるのですが、その通りでもないこともあります。著者や作曲家、デザイナなど、オリジナルの作者は、copyrightを持っていますが、それをどう行使するか?について決めることができるので、「誰でも自由にコピーして構わない」と考える作者もいます。誰でも自由に使って良いものは、パブリックドメイン(公有)と呼ばれます。その場合、著作権者がどんどん勝手にダウンロードして視聴して広めて欲しいとしているわけなので、違法にはならないというわけです。例えば、キルバーンのwikipediaのページで公開されている低解像度のタンポポの図はパブリックドメインです。ここに僕が公開しているものよりも品質が低いです。

インターネットは、世界中の人を視聴者であると同時に著作権者にしました。その中で、著作権コントロールの煩雑さが人間の文化の発展をさまたげないように、ネットに公開されている著作物は、著作権で制限される範囲や利用条件などがきっちりと表示されていることも多いです。それを丁寧に確認しながら守っていけば、違法でない、良いコピーをしながら文化を発展させられます。

ちなみに、図1のオリジナルはすでに著作権の切れた版画ですが、僕がそれをscanして公開している部分については、小田に著作権があるということになるので、僕が自分で公開している分には問題ありません。図2は、Victoria and Albert Museum, Londonが著作権を持って公開している図ですので、利用許諾の条件に従い、それを明示して利用しています。

references

  1. Claire Elsworth Design (2019). William Kilburn https://www.pinterest.jp/CElsworth01/william-kilburn/ (July 1, 2019).
  2. Victoria and Albert Museum, London.(2019). http://collections.vam.ac.uk/item/O156104/design-kilburn-william/ (July 1, 2019).
  3. Wikipedia (2019). William Kilburn. https://en.wikipedia.org/wiki/William_Kilburn (July 1, 2019).
TOP