研究も料理もおいしくておもしろい!

秋ですね。スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、食欲の秋......みなさんにとってはどれでしょうか? いろいろな秋の中で、ここでは「読書(に近いかな?でももっと広いこと)」と「食欲」、つまり研究と料理の話をしようと思います。

私は社会言語学の研究をしています。ことばが社会の中でどのように使われているか、人によってどうことばが異なり、同じ人でも場面や状況によってどうことばを使い分けているか、などに関する分野です。また、私たちの会話にはどんな相互行為やメカニズムが潜んでいるか、という談話分析・会話分析もやっています。そして、料理もかなり好きです(好き=得意・上手とは限りませんが)。外でおいしいものを食べると、「家でも作れないかな?」と思ってちょっと試してみたりしますし、仕事が忙しい時や落ち込んだ時のいい気分転換にもなります。

なぜ研究と料理かというと、この2つには共通するものがたくさんあるからです。あるテーマで研究したいと思ったときには、同じようなテーマで既になされている先行研究を探して読みます。そのテーマについてどんなことが明らかにされているのか、さらに明らかにすべきことは何なのか、他の人はどんなデータをどんな方法で分析したのか、などを知るためです。料理でも、初めてのものを「作ろう!」と思ったら、料理本やcookpadを見て、どんな食材や調味料を使ってどの順で何をするのか...とレシピを調べたりしませんか? でも、どちらの場合でも(まあ料理はレシピに忠実に従ってもいいですが)、他の人のやり方を調べた上で何か自分なりの工夫やアレンジを加えるのがおもしろいところだと言えるでしょう。

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料理は、作ろうと思うメニューに適した食材と調理法を組み合わせることが大事です。そのままソテーしても固くておいしくないスジ肉も、煮込めば絶品シチューになるように、素材を生かすも殺すも調理法しだい。研究も同じで、目的(何を明らかにしたいか)にぴったり合うデータを集めて、そのデータの特性をきちんと生かせる分析方法を選ぶのが成功のカギになります。コミュニケーション専攻では、2年次に「コミュニケーション研究法入門」、3年次に「コミュニケーション研究法実習」という授業があって、さまざまなデータ収集方法や分析方法を学びます。それぞれの方法の長所や限界を知ることで、自分の研究目的に合ったものを的確に選べるようになるからです。

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それから、これこれの料理を作ろうと思って材料を買い集めることもありますが、たまたま誰かからおいしい食材をもらったので、それを主役にした料理を作ろうということもあります。研究でも、目的に応じてデータを集めることが多いのですが、それだけではなく、これはなんかおもしろいぞと思うデータに出会って、これから引き出せることは何だろうという発想でデータをじっくり眺め、分析方法を考えていくという場合もあります。これも、食材との出会いで初めての料理に挑戦できるように、思いがけない発見や楽しさを生む研究につながったりします。

こんな風に考えると、研究と料理、よく似ていますよね。料理が好きな人、大学での学びや卒論研究で、きっと同じようなワクワクが経験できると思います。研究に興味のある人、料理も楽しんでみてください。おいしいものを作りながら、研究するときのおもしろさや工夫の仕方のヒントがたくさん見つかりますよ。

熊谷智子
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