ミャンマーでの参加型学習ワークショップ

こんにちは。松尾です。

2019年3月にミャンマーへ行ってきました。カレン民族が集住するカイン州のパーン(Hpa-an)という町でワークショップを行うためです。小学校から高校の先生計30名が参加し3月19日、20日の2日間行いました。ワークショップのテーマは、「参加型学習」です。生徒の参加を促す教育が目標となります。

このワークショップには「教師が一方的に生徒に教えるだけの暗記偏重型のミャンマーの教育を改善していきたい」との思いをもつ、東京在住のビルマ(ミャンマー)難民・チョウチョウソーさんからの依頼に応えて関わっています。「松尾先生のやり方で参加型学習のワークショップをしてくれませんか」とチョウチョウソーさんに依頼されました。前回同様、大学院生がアシスタントを務めてくれました。

2014年、チョウチョウソーさんが日本語を学ぶ機会があまりない同胞のために日本語教室を開きたいと思っていた時に、わたしは彼と出会いました。毎日曜日、活動を続けています。運営には大学院生や卒業生が関わっています。活動では、食品廃棄や女性の社会進出、老老介護、平和の問題など唯一の正解を見出すことがむずかしいトピックをあえて選び、参加するすべての人が学び合あえるようデザインしています。そのやり方をみてチョウチョウソーさんはワークショップを依頼してくれました。

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パーンはヤンゴンから車で6時間ほど掛かります。初日の午後には、「権利の熱気球」という活動を行いました。乗っている熱気球が重くて落ちそうになったとの前提を立て、荷物として載せている5つの権利(医療、平和、教育、食事、意見表明)のどれをどの順番で捨て、最後にどの権利を残すかというグループワークです。軍とカレン民族独立派の紛争地域で暮らし日常的に生命の危機を感じていたある教員は「今は昔に比べればずっと平和になったので、平和の権利は捨てても大丈夫と思う」と語りました。そういう見方があるのかと驚きました

2日目は「2人の商人」というミャンマーの人ならほぼ全員が知っている教科書に載っている物語を使いました。人を騙して高価なものを安く巻き上げようという商人と正直な商人が登場する物語です。最後は正直な商人が得をして、あくどい商人は怒りのあまり死んでしまいます。まずは、先生方にどのようにこの物語を習ったか授業を再現してもらいました。予想通り、授業が「正しい答え」のみで成立していました。物語の解釈も勧善懲悪の理解のみで終わっていました。この授業の構成を否定するのではなく、「正解のない問いも授業に取り入れてみませんか」と提案しました。「その問いをグループで考えましょう」と投げかけ、グループごとに対話を積み重ね授業に取り入れる内容を考えていきました。その結果を模擬授業として発表してもらいました。いくつかの問題点、課題はあったかもしれません。それでも、貴重な一歩を踏み出したのだと思います。そうした瞬間に居合わせることができ本当に喜びを感じています。日本語教育に関わってきたからこそこういう機会を得られたのだと思います。こうした活動に興味、関心を持ってくれる人がいたら、是非とも仲間として一緒に活動に参加してくださいね。

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松尾 慎

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