地域社会に生きる外国人と日本語教育
こんにちは! コミュニケーション専攻の石井です。初ブログ、よろしくお願いします!
最近は、街中で様々な外国語が聞こえ、コンビニやカフェなどで外国人の店員さんもよく見かけますね。都市部だけでなく、日本各地で外国人住民が生活しています。
日本語教室もなく、日本語教師もいないところで暮らしている外国人の日本語学習を支援するために、文化庁が2017年度から「地域日本語教育スタートアッププログラム」という事業を開始しました。日本語教室のない地域で自治体主体の教室を開き、外国人住民と日本人住民の協働の場を作り、地域を活性化しようというもので、採択されると3年間の補助金が出ます。私はこのプログラムで3年間、長野県豊丘村、石川県中能登町、岩手県宮古市の3地域にアドバイザーとして関わって来ました。今回は、豊丘村のことを紹介します。
豊丘村は、「日本一星空が美しい村」と称しているだけあって、冴え冴えとした冬空を見ていると宇宙に吸い込まれてしまいそうです。松茸やりんご、桃などの果樹栽培が盛んな村です。村への行き方をネットで検索したところ、新宿から高速バスで4時間と出ました。乗り換え無しで楽勝!と思ったのも束の間、よく見ると高速バスの停留所から目的地の公民館まで「徒歩54分」と書いてあります。路線バスなどありませんし、道に迷ったらおしまいです。これは車でお迎えに来ていただくほかないと観念しました。実際、車での移動中にほとんど人とすれ違うことはありませんでした。
普段の自分の感覚でものを見たり考えたりしていると、その地域での生活が見えてこないのですね。生活が見えないと、人々の生活やコミュニケーションのニーズもわかりません。豊丘村に行く車中で、まず自分の意識の足りなさを痛感しました。到着した日本語教室を主催する公民館は、林業が盛んな村だけあって木の香りに包まれた美しい町舎でした。
人口約6300人の豊丘村の外国籍住民は約100人、小さい村にとって大きな割合です。豊丘村や近隣の町村から、満蒙開拓団として中国に多くの人を送り出した地域のため、日中の国交回復後に戻っていらした多くの中国帰国者やその家族が定着地として生活しています。日本語ができる人もいますが、同じ団地に住む帰国者同士で中国語で生活している方たちも多く、日本語コミュニティとの情報共有はあまりないようです。日本語教室に来てもらいたいのは、「外国人」だけではありません。言語・文化と国籍は関係が無いのです。
豊丘村では日本語教師の経験を持つ住民を中心に、日本人住民数名で日本語教室を開いています。教室に通ってくるのは中国からの人が多く、イギリス,ニュージーランド出身の参加者もいます。若い世代の人が多く日本人と結婚して豊丘村で生活している人や、中国人の家族が中心で、親子での参加もあります。教室では日本の伝統的な行事などをテーマに、季節の行事などに合わせた活動を組んだりしていますが、若い日本人サポーターよりも,長年村に住んでいるイギリス人のほうが日本の伝統文化の意味や歴史、地域ごとの違いなどをよく知っていて、日本人スタッフが教えてもらうことも、しばしば見られました。日本に興味をもって暮らしている人は、あたりまえに日々を過ごしているネイティブよりずっと深く、詳しく日本を知っています。日本人の方が「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」といわれそうです。
年度最後の活動日に、中国出身の方たちの提案で餃子パーティーをしました。食材買い出しから後片付けまで全ての段取りを見事に仕切ってくれて、おいしい餃子で盛り上がったとのことでした。「日本語教室の学習者」とは、これまでの人生でいろいろな力を身につけている人々です。多様な社会・文化を経験し、比較の視点を持っている人たちの力を「日本語」のフィルターを外した実践活動の中で知ることができました。
石井恵理子