東女でみつけるSDGsの取り組み

あけましておめでとうございます。みなさん、どんな新年をお迎えでしょうか?

2021年は、COVID-19の感染拡大への対応が続いた年でした。この感染症の問題は、個人や一国では解決できず、グローバルな観点から解決が必要です。例えば、先進国ではワクチン接種により小康を得て、またオミクロン株への対応としてのブースター接種が行われていますが、世界全体でのワクチン接種率が向上しないと新たな変異が生じ、収束は見えてきません。COVID-19の問題は、私たちに地球に共生する人々の協力をより強く意識させたといえます。みなさんも、地球を持続させるためのSDGs(sustainable developmental goals, 持続可能な開発目標)について、あらためて考えたのではないでしょうか。最近、企業やメディアでも、そして高校生のみなさんも話題としているSDGsですが、東京女子大学でもSDGs宣言を行いました。ここでは、キャンパスのなかでみつける東女のSDGsへの取り組みから、3つのストーリーを紹介しましょう。

東女の女性学研究所

パンデミックの中、国内外の移動や行動が制限され毎日が息苦しくなってしまいましたが、同時に今まで足早に通り過ぎていたキャンパスの小道に、身近な風景の美しさを発見することも多くありました。東京女子大学のキャンパスでまず印象に残るのは、正門から本館へとつながるVERA広場を中心とした伝統的な建築群と、図書館へとつながるcroSS広場を中心とした現代的建築群のコントラストです。さらに、本館裏に広がる雑木林と、そこにたたずむ3つの洋館が醸し出すレトロな風景も宝物です。ちょうど、クリスマスに放映された、新美の巨人でもこのスポットが紹介されていました。これらの洋館はアントニオン・レイモンドのデザインによるもので、番組ではそれらと紅葉の美しいハーモニーが描き出されており、足繁くキャンパスに通っている私にとっても印象的な映像でした。季節ごとに多様な草花が"ありのまま"の形で咲く風景は、自然環境との共生を思い起こさせ、東女のキャンパスでしか体験できない、環境を考える"東女SDGs"ストーリー1です。

その小道の一番奥に外国人講師館があり、1階に女性学研究所があります。9つのアジアキリスト教主義女子大学によるアジア女性学研究所(Asian Woman's Institute)を基軸に、1990年に設置されました。日本の女子大学の中では、女性学研究所を持つところは少なく、海外からも多くの問い合わせがあります。2020年、英語名をInstitute for Research on Women and Genderとして、30年目をスタートさせました。自然光が差し込む建物には、図書室や集いのスペースがあり、学生と研究者とのコミュニケーションを促進する研究会、講演会、そしてWoman's caféが運営されています。また、青山なを賞をはじめとする研究奨励金や個人・共同研究、研究所企画研究などを通じて、女性学・ジェンダー研究のサポートをしています。2021年のWoman's café のトピックは、現代芸術やポップカルチャーとジェンダーを巡るものでした。日常で接している"文化"にある潜在的なジェンダーバイアスを専門家の話から学び、Q&Aで思索を深めることができました。また、「コロナ禍の私たち」のレクチャーシリーズでは、学生がファシリテーターを務め、国内外のエッセンシャルワーカーの方々から直近の問題に挑む女性についてのお話をうかがいました。不安や恐怖を超える使命感のもとに繰り広げられる仕事ぶりは、尊敬に値するばかりでなく、他者理解をToleranceからAcceptanceへと進める "共生"のあり方を示したものでした。ジェンダー平等を考える "東女SDGs"ストーリー 2がここにあります。

東女校内の秋の様子

もちろん、SDGsを考える授業も数多く提供されています。特に、コミュニケーション専攻では、情報技術を利用して、障がいをもつ人々へのサポートとコミュニケーションを学ぶこと(小田先生や渡辺先生のブログ)、社会にあるジェンダーやエスニシティバイアスを理解すること(有馬先生、橋元先生のブログ)、そして多文化多言語を背景としたコミュニケーションの理解と支援(松尾先生、熊谷先生、石井先生のブログ)など、ダイバシティ理解を中心に、問題の解決を目指す授業が用意されています。私の担当する授業―文化心理学―について、少しお話ししましょう。文化心理学(グローバル社会)では、異文化理解に関わるさまざまな心理的バイアスについて学習し、多文化の人々への理解を深めていきます。世界のさまざまな文化(欧米からアジア、中東に至るまで)に対して、受講生(私たち自身)が抱いているイメージを最初にあぶり出し、各グループがそれぞれの文化の歴史的政治的社会的背景を調べ、私たちの持つイメージとの齟齬を提起し、問題意識をもって文化心理学の研究で明らかにされてきた心理実験や調査の講義を聴きます。そこから、自分たちの潜在的バイアスを知り、多文化の人々への真の理解へと共生を考えていきます。ダイバーシティの問題に正面から取り組むコミュニケーション専攻の授業での経験は、"東女SDGs"ストーリー3であるといって良いでしょう。

SDGsでは17の目標が掲げられていますが、それらを達成するためには私たちが日常生活の中で問題を意識し、研究の知見を学び、その解決を考え、実践していくことが必要不可欠です。そんな日常を提供してくれるキャンパスライフが東女にはまだまだたくさんあります。2022年、さらにどんな東女SDGsストーリーが増えていくのか、楽しみです。ぜひ、東女にいらして発見してください。

唐澤真弓

TOP