場所や状況に合った操作方法

現在、音声でアプリを操作するVUIが世の中に浸透してきています。VUIの「V」は「Voice」のこと、つまり音声です。「UI」は「User Interface」のことで、人とコンピュータとのやりとりの手段を表します。普段よく使うのはGUI(Graphical User Interface)ですね。これは視覚的なUIという意味で、ボタンや入力欄など、目で見て様々な操作をするという手段です。VUIは音声で操作をする手段で、アプリに声で話しかけ、アプリからも声で応答が帰ってきます。スマートフォンでも使うことができますし、Alexaなどもよく使われています。「アレクサ、今日の天気は?」などと話しかけると、今日の天気を音声で教えてくれますね。

VUIのピクトグラム

ですがVUIの使用が時と場所を選ぶのは、誰もが感じていることではないかと思います。自宅の自分の部屋で1人で使うのは良いかもしれませんが、電車で他人に囲まれている中や、図書館などの静穏な環境で使うことは憚られますし、躊躇もします。では、GUIはどうでしょうか? GUIに関しては、自分の部屋で1人で使うときでも、電車の中でも、図書館でも憚られることも躊躇することもないかもしれません。ですが、例えば歩行中や料理中など画面を見ることができない状況だったり、手が空いていない状況では使えません。こういうときにはVUIを使う方が向いているかもしれません。

GUIのピクトグラム

つまり、GUIにせよVUIにせよ、使うには、場所や状況により、向き不向きがあるということです。これに関して、Bill BuxtonさんはPlaceona[1]という用語を提唱しています。製品やサービスの典型的な利用者像をペルソナという架空の利用者として表現し、製品やサービスに対するニーズを洗い出す、ということがよく行われています。この考え方を、場所や状況に応用したものがPlaceonaです。

例えば歩行中であれば、利用者の手は空いているかもしれませんが、目は前を見なければならず、アプリの画面を見ることはできません。会話をすることはできます。また、私は去年から家庭菜園を始めたのですが、家庭菜園の作業中は目でアプリの画面を見ることはできますし、会話をすることもできますが、手が汚れていてアプリを操作することはできません。つまりこういった状況では、GUIを使うことはできませんが、VUIを使うことはできるでしょう。

家庭菜園をする様子

このようにPlaceonaは、利用者がその時にいる場所や状況に応じて目や手、耳、口が空いているかを考え、どのような操作方法が利用できるかを表します。利用者がアプリを使う場所や状況は様々です。どのような場所や状況が考えられ、そのときに利用者の状態はどうなっているかを調査し、どのような操作方法が適切か(GUIやVUIだけではなく、様々な入力・出力方法の組み合わせも考えられるかもしれません)、それぞれの操作方法によりできることやできないことを考えたりする研究も面白いかな、と最近思っています。

[1] Bill Buxton, Wild Design for Living in the Wild, Keynote of Interaction 19, 2019.

白銀純子

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