VEC日本語活動 学び合いをつづけて400回を迎えました
まず、自己紹介をさせてください。名前は松尾慎といいます。30年近く日本語教師をしています。そして、東京女子大学では日本語教員養成課程を担当しています。ブラジルやインドネシア、台湾、イランなどで日本語教育に関わり、2009年から東女に勤めています。
もう一つの顔は、VECという市民団体の代表です。VECは東京の高田馬場で、毎週、日本語活動をしています。この活動には、海外出身で日本語を学びたい人や東女の大学院生、学部生、卒業生、一般市民など、多様な人々が参加しています。この活動は、ミャンマー出身の難民当事者であるチョウチョウソーさんとわたしが力を合わせて2009年に立ち上げました。
日本では、2022年、難民認定を求めた人10,345名のうち難民認定を受けた人は202名に過ぎません。難民認定率は、1.95%になります 。難民認定を受けた人は、無償で半年間の日本語指導を受けることができます。では、残りの98%以上の人はどのように日本語を学べばいいのでしょうか。そこを埋めているのがVECのような市民団体やNPOです。
日本在住ミャンマー人が集う町の一つが東京の高田馬場です。高田馬場駅の近くにある20軒ほどの店でミャンマーの様々な料理が提供されている他、ミャンマーの食材店やミャンマー人向けのカラオケも営業されています。わたしたちのVEC日本語活動は、この高田馬場の小さなアパートの一室で営まれています。
わたしはこの日本語活動の立ち上げから今までずっと関わってきました。わたしの他に東京女子大学の大学院で日本語教育を専攻している大学院生、学部生、卒業生などがファシリテーターを務めています。活動は、毎週日曜日の午前10時から正午までの2時間で、2023年9月3日に活動は400回を迎えました。活動には、ミャンマー出身参加者、ファシリテーターの他にビジターが参加することがあります。また、ここ1,2年で、中国やインドネシア、フィリピン、パキスタン出身の方も参加するようになりました。
わたしたちの活動の特徴を一言であらわすなら、「学び合い」です。日本語教師が日本語学習者に一方的に日本語を教える教室ではありません。ですからあえて、「教室」ではなく「活動」と言っていますし、「教師」とは呼ばず、「ファシリテーター」と呼んでいます。この活動は、すべての参加者が相互に学び合えるようにデザインされています。毎回、テーマを決めて、対話したり、町に出て実践に取組んだりしています。例えば、ユニバーサルデザインやフードロスに関し話し合ったり、白杖を使って歩く体験をしたり、視覚障害者の手引をする体験をしたり、高田馬場紹介映像を作成したり、日本語「能力」に関わらず対等に活動できるようなデザインを行っています。おかげさまで、400回の活動には、500名以上の方が参加してくれました(延べ人数ではなく、500名以上の異なる人が参加してくれました)。
活動後の楽しみは、チョウチョウソーさんが経営しているミャンマー(ビルマ)料理レストランでのビュッフェです。しっかり学んで対話して、美味しい料理を笑顔で仲間と食べて、頭も心もおなかも大満足です。やはり、楽しいことがあるからこそ、9年以上、毎週、活動を続けてくることができたのだと思います。この活動は、だれでも参加できます。もし、活動に興味を持たれたら是非とも参加してみてください。高校生の参加も大歓迎です。もちろんシニア世代の参加者も多数です。だれでもウエルカムなのがVECです。
学生たちはこの活動への参加をきっかけとして、海外ルーツの子どもに対する対面での学習支援活動やイスラム教を背景にもつ家庭の子どもに対するオンライン学習支援活動、定時制高校での海外ルーツの生徒に対する学習サポートなどに関わるようになっています。学生たちが活躍できるフィールドは無数に存在しています。
VECへの問い合わせは以下のHPの「一緒に活動しませんか」からできます。皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。 VEC (Villa Education Center)