海外ルーツの子どもの学びを支える ―東女生によるオンラインによる学習支援活動―

2018年に文部科学省が行った調査によると、日本語指導が必要な児童生徒数は全国で50,759人います。2016年の調査に比べて15.5%も増えています。日本語指導が必要な児童生徒の多くが日本以外の家庭背景を持っています。こうした子どももそれぞれ事情が多様です。日本生まれ、日本育ちの子どももいれば、小学校年代で日本に移り住んできた子どももいます。ただほぼ共通しているのが、日本語指導が必要な児童生徒の多くが日本語(国語)学習だけに困難を抱えているのではなく、算数、理科、社会などの教科学習にもむずかしさを抱えているということでしょう。

オンラインで算数の問題を解く様子

わたしは2019年、ロヒンギャ難民のAさんと知り合いました。Aさんから「うちの子どもに勉強を教えてくれる人はいないでしょうか」という相談をうけました。わたしはちょっとびっくりしました。Aさんは日本で大学を卒業しており、日本語でも英語でもシンポジウムでの発表ができるような方です。そのAさんでも小学生のお子さんの学習サポートが十分にできないということがわかったからです。わたしは「探してみます。なんとかしましょう」とお答えしました。

オンラインでの学習サポート

これまでのブログ(2020年12月)にも書きましたがわたしは日本語教育を専門にしており、東女で日本語教員養成課程を担当しています。課程を受講している学生たちに学習サポートの話をしたところ、数名の学生が手をあげてくれました。コロナ禍が始まった2020年の6月からオンラインによる小学校の勉強のサポート活動が始まりました。2021年6月末現在で5家庭8人の子どもたちのサポートをしています。学生メンバーは、日本語教育を学ぶ大学院生が2名、学部生たちが16名います。一家庭につき週に2回、3回、学習をサポートしています。わたし自身が直接活動に関わることはありませんがアドバイザー的な形でこの活動に関わっています。

タイトルに「支援活動」と書きましたが、一方的に学生たちが子どもたちを支援しているわけではありません。学生たちもこの活動を通して多くのことを学んでいます。学生たちの思いを以下に、少し書いてもらいましょう。

子どもたちの成長を間近で感じられること、学習や会話を通して私自身にもたくさんの学びがあることが、この活動の楽しさです。これからも「学び合いの場」として有意義な活動を続けていきたいです(国際関係専攻4年:澁谷こはるさん)。

この活動は、大学の講義で得た知識をさらに深く理解でき、それ以上のことまで学び、考えさせられる生きた「学びの場」であると感じます。今後も多くのことを学んでいきたいです(国際関係専攻4年:伊豆田理奈さん)。

この活動は私にとってとても大切なものです。子どもたちや親御さんとの対話を通して、私は日々「多文化共生」について考えるきっかけをいただいています。自分に何ができ るのか、これからも模索し続けたいと思います(日本文学専攻4年:東樹美和さん)。

女の子の似顔絵

わたしたちが暮らしているこの社会には様々な困難な状況を抱えている人々がいます。わたしもあなたもその一人になる可能性があります。社会に存在する様々な課題、問題を自分ごととして捉えることは簡単ではありません。それでも、現実を知り、小さな一歩でも踏み出す勇気をもつことで社会がよりよい方向へ動き出す、そう信じて今後もこうした活動を学生とともに続けていきたいと思います。

注:この活動に参加している大学院生の一人の西村さんが2020年にブログ記事を書いています。ぜひ、お読みください。

松尾慎

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